藤本哲也 公正取引委員会事務総局 事務総長
社会で活躍するOB
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出典:公正取引委員会公式X
<組織マネジメントの要諦はラグビーから>
私は現在公正取引員会事務総局で仕事をしています。公正取引委員会は,公正かつ自由な競争を促進するための独占禁止法等を運用する独立行政委員会で,委員長と4名の委員で構成されています。この委員会を支えるスタッフ部門が事務総局で,総勢900名強の組織です。
私は,この事務総局を一つのチームだと考えています。事務総局は,独占禁止法の執行等を行うために法律や経済についての専門知識が求められる専門家集団です。公正取引委員会は,社会経済の情勢が大きく変わる中で,その役割が増大している上,より高度な専門能力の発揮が期待されています。このため,事務総長の任務を拝命した際,組織力の強化を図ることが大きな課題だと思いました。
そこで,職員の皆さんには以下の3つのポイントを示しました。
1つ目は、「受け身ではなく主体的に取り組んでいく姿勢」です。つまり、一人一人が「これは私が企画した。私が考えた。私が道を開いた。」と言えるような仕事ぶりを各々が行うことが大事だと思っています。そういう仕事をすることによって、仕事の面白みがどんどん増えていくと思います。
2つ目は、「常に目的意識と問題意識を持つこと」です。簡単に言えば、「今私がやっているこの作業は一体何のためなのだろうか。この仕事は世の中のためになっているのだろうか。今もこの仕事は本当に必要なのだろうか。」といったことを考えるということです。そして、現在我々が直面している課題は何だろうか、この課題に立ち向かっていくためにはどんなやり方があるだろうか、今の状況でよいのだろうかといった問題意識を持って仕事に取り組むことが大事だと思っています。
3つ目は、「世代を超えたコミュニケーション」です。組織で仕事を行う以上、チーム全体で志を共有し、方向性や仕事に必要な情報を共有することが非常に重要です。また、誰が発言したのかは大事ではなく、何を言ったのか、何を議論したのかという中身が大事だと思っています。その議論の中身についてみんなが納得した結果、良い仕事ができることに繋がるのだと思います。
これら3つのポイントを考えた際,自分の頭にあったのはラグビーにおけるチーム力向上のための方法論です。「与えられたものをこなすだけでは,本当の力は生まれません。・・・自分で考えたり,決断したりすることから,大きな力が生まれるのです」(注1)というエディー・ジョーンズ氏(ラグビー日本代表ヘッドコーチ)の言葉,「ラグビーでも,いいチームは一軍の選手から控えの人間まで非常に意識が高いですよ。試合に出ていない人間までが『俺はチームに何ができるか』ということをいつも一所懸命考えている。」(注2)という故平尾誠二氏(元神戸製鋼ラグビー部ゼネラルマネージャー)の言葉は印象的です。
(注1)エディー・ジョーンズ『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』講談社+α文庫38頁
(注2)藤尾秀昭監修『1日1話,読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』致知出版社37頁
天王寺高校のラグビー部では,質実剛健といった気風のほか,文武両道の在り方,チームワークの難しさと素晴らしさ,試練への向き合い方など多くのことを学んだと思いますが,組織のマネジメントの在り方を追求するにあたっても,当時の実体験が底流にある気がします。
<藤本哲也(ふじもとてつや)プロフィール>
高校34期 1963年生まれ
略歴
1987年 東京大学法学部 卒
1987年 大蔵省入省。大臣官房秘書課配属。
2009年 公正取引委員会事務総局経済取引局調整課長
2011年 経済取引局取引部企業取引課長
2013年 審査局第二審査長
2014年 審査局管理企画課長
2015年 官房総務課長
2018年 近畿中国四国事務所長
2020年 経済取引局取引部長
2020年 官房政策立案総括審議官
2021年 審査局長
2022年 経済取引局長
2023年 事務総長